きょうだい児の“楽しい”を応援する「ワッフル」
父の日、母の日、と同じように、「きょうだいの日」があるのをご存知ですが?
4月10日「きょうだいの日」は、日本では2019年に制定され、お兄ちゃんや妹など血縁関係だけではなく、きょうだいのように思っているひとなど、あらゆる「きょうだい」への想いやきょうだいの思いが尊重される優しい記念日です。
いろいろなきょうだいの形があるなか、ハンディキャップがある兄弟のことを「きょうだい児」といいます。きょうだい児は「自分を構ってほしい」と思っていても、親のことを想ってなかなか言えずに我慢してしまい、大人になってもその感情を抱えてしまうことも多いといいます。
私もハンディキャップがある子の親として、急に課される難題なミッションに向かうだけでもパンクしている中、きょうだい児へのサポートまで考えきれない日々が続いています。
「平塚きょうだい児支援の会 ワッフル」を立ち上げた、代表の濱崎幸枝さんもそのお一人だったそう。
■10年が経過して初めて知った「きょうだい」であるお兄ちゃんの想い
濱崎さんは、次男に生まれつき内臓疾患があり、産後から5ヶ月の入院生活、重度心身障がい児の親として過ごされてきました。次男が生まれた時、長男は年長さん。
「1人で待合室で待っていることが寂しかった。その時の心の穴はまだ空いているし、埋められない」
長男が高校生になった時に、その当時の気持ちを初めて打ち明けてくれたそうです。
打ち明けられる関係性であること自体がすごいことだと思うのですが、その一言は同じ母として心臓がよじれる思いがしました。
濱崎さんはその告白を受けて、「きょうだい児」についてすぐ学ぼうと動きましたが、当時、平塚市に支援団体がなかったのです。「じゃあ、私が立ち上げよう!」と行動して生まれたのがこの「平塚きょうだい児支援の会 ワッフル」(以降、「ワッフル」)。
■お兄ちゃんを主役としてみてくれる大人の必要性
ワッフルでは「きょうだい児」同士の交流や「きょうだい児」を応援してくれる大人と一緒に“楽しむ”空間を大事にしているそう。私の子どももそうですが、障がい児自体がマイノリティの中、きょうだい児同士が接点を持つ機会は意識しないとなかなかありません。
ワッフルのイベントに参加されたきょうだい児が、「あの子も一緒なんだね」と話をしてくれ、気持ちを聞くきっかけになり、ひとりではないことを実感してもらったことが嬉しかったと濱崎さんは嬉しそうに語ってくれました。
きょうだいの関係はそれぞれですが、濱崎家は、長男は自称ブラコン、というほど、弟さんのことが大好き。反抗期の時ですら、弟さんへの愛情は変わらなったんだとか。
その理由を長男に聞いた時に、
「(次男)のお兄ちゃんだからしっかりしないとね!」「我慢しないと」など、よく言われがち。でも、小学生から高校生まで続けていた野球部の周りの親御さんなどから、そのようなことを言われなかったことが大きかったと話してくれたといいます。
「その親御さん達のおかげで、次男を長男の野球に連れて行くことに少し戸惑っていたのですが、長男から一緒に来てよ!と言われ、実際に行ってみると、病気のこともあっさり自分から話していた姿に、とても驚きました。そして、とても頼もしかったです(濱崎さん)」
障がいがある子のきょうだいではなく、1人の「自分」を第三者の大人が見てくれることの大切さを実感。きょうだい児の目の前に見える景色をいろんなスポットライトが当たる楽しい舞台にしたいという思いで活動されています。
現在、2ヶ月に1回程度、季節のイベントなどを開催されています。
■楽しいが一番!きょうだい児がいるからこそ始まる「家族のイベント」
リアルでのイベント開催の場所は平塚市がメインですが、参加者は平塚市在住に限ってはいません。過去のオンラインイベントでは関西からの参加者もいらっしゃったそうです。
参加者の障がいの内容はそれぞれ違うので、きょうだい児の環境も悩み事もそれぞれ違いますが、多様性を感じながら、自分のきょうだいも知ってもらい、「疎外感を感じなくていいんだ!」ということを体験できる「楽しいワクワク」がみんなを繋いでいきます。
どんなイベントをこれまでワッフルさんで行ってきたのか、少しご紹介します!
・プラネタリウム
2023年8月に行われた「プラネタリウム」。(「星つむぎの村」ご協力)
移動式のプラネタリウムでの開催で、参加者からも「ここでしかできない特別な体験だった」と好評だったそうです。
・ハロウィンやクリスマスイベント
ハロウィンやクリスマスなど、仮装したり、クリスマスグッズを作ったり、撮影ももちろんみんなで楽しみます。2023年のクリスマス会では、それぞれ一品ずつ軽食を持ち寄ったパーティーを開催。全員参加のゲームで、きょうだい同士でも盛り上がったそうです。
家や家族だけでこれだけ準備するのは難しすぎるので、このようなイベントはとてもありがたいです。
瞬間に周りが明るくなるような濱崎さんの笑顔で「楽しい」を纏っていることが伝わるのですが、「楽しさ」を大切にするのは、ハンディキャップがある次男との経験がありました。
難病の子どもたちに本格的な公演を届ける「心魂プロジェクト」の公演を次男と見たときに、新しい世界に衝撃を受け、大好きになったんだそう。
「講演では話し声も吸引の音も気にすることなく、一緒に楽しむことができ、(次男と)一緒に観にいきたい!という目標ができたことで日々の生活のモチベーションにもなりました。次男自身がいろんな人と関わり、出会って行くことで、今までできないと思っていたことでも、できることに気付かされたり、やりたいことをできる方法を知ることができました。実は先日ついに舞台にも上がったんです!(濱崎さん)」
「楽しい」がもつパワー、広がる出会いの影響力はとてもすごいことですね。
「楽しいが一番!みんなの笑顔がたくさん生まれる場所にしたい」濱崎さんの想いが込められたワッフルでは、今後も季節に合わせたイベントを2ヶ月に1回くらいのペースで開催予定とのこと。
次回もとても楽しみです。
イベントのお知らせは、ワッフルの各SNSで発信されますので、ぜひご覧ください。
■平塚きょうだい児支援の会 ワッフル
2020年7月に発足。心や体にハンディキャップを持つ人の兄弟姉妹である「きょうだい児」の心のケアやサポート、情報共有など、寄り添える場所を目指して神奈川県平塚市で活動。
過去のイベントや今後のイベント予定は各SNSから。
Instagram
https://www.instagram.com/kyoudaijishien.wafflle/?hl=ja
X
https://twitter.com/wafflle0718
Facebook
https://www.facebook.com/2020718kw/
□記事内ご紹介団体様
NPO法人 しぶたね
https://sibtane.com/
(きょうだいの日サイト https://siblingsday.jp/)
一般社団法人 星つむぎの村
https://hoshitsumugi.org/
NPO法人 心魂プロジェクト
https://www.cocorodama.com/index.html